JBL、その名は「音」に人生を捧げた一人の天才エンジニア ジェームス・B・ランシング のイニシャルに由来しています。
60余年にわたり世界のエンターテインメントを支えてきた JBL、そのテーマは「音と美の追求」です。

[1] JBLコーンユニットの基本構造

JBLのコーン型ユニットには、高能率、低歪み、高耐入力、高リニアリティーを追求するため、様々な工夫が凝らされています。


JBLユニットの基本構造

下図は、JBLの代表的ユニット「2225H」を例に、コーン型ウーファーユニットの基本的な構造を示した物です。

JBL ウーファーユニット構造図

1:ボイスコイルと磁気ギャップ

ボイスコイルの巻き線長と、マグネットギャップの深さ(トッププレートの厚さ)は、ユニットの歪みとリニアリティーおよび感度に大きな関係を持ちます。JBLウーファーユニットは以下の3つのタイプに大別されます。

1-A:ロングボイスコイル/ショートギャップ (2235H/2245H/1500FE 他)
ロングボイスコイル/ショートギャップ
ギャップの深さよりも長いボイスコイル長を持つ構造です。マグネティック・ギャップの外までボイスコイルの動作領域を持つため、大きな振幅特性が確保できますが、ボイスコイル質量が重くなり、またパワー損失も大きいため能率はあまり高くできません。大振幅時のリニアリティーを確保するためにダンパーの選択が重要になります。重低音再生に適し、スタジオモニター用ウーファーなどに用いられます。
1-B:ショートボイスコイル/ディープギャップ(2220/150-4H/1500AL 等)
ショートボイスコイル/ディープギャップ
ギャップの深さよりもボイスコイル長を短くした構造です。ボイスコイルが常にギャップ内で動作するため、高いリニアリティーと歪みの少ない再生が行えますが、大きな振幅は確保できません。ボイスコイル質量を軽量化できますが、ギャップが厚いため能率を高めるには強力なマグネットを用いてギャップ内の磁束密度を高める必要があります。ハイエンドのホームオーディオシステム用に採用されています。
1-C:ボイスコイル=ギャップ(E110/E120/E130 等)
ボイスコイル=ギャップ
ボイスコイル長とギャップの深さを揃えた構造です。軽量ボイスコイルと高い磁束密度により最も高感度のユニットが設計できますが、歪みと直線性で上記二方式に劣ります。楽器用の高能率スピーカーなどに用いられます。

2:ボイスコイルの素材と形状

ボイスコイル素材の選択や線材の断面形状およびその巻方は、ユニットの感度や許容入力、応答性などに密接に影響します。JBLでは主に以下の素材が用いられています。

2-A:アルミニューム・ボイスコイル
(LE-8T/E130/1500AL)
素材自体が軽量なため高い感度を得られます。また、導通抵抗が高く、同じインピーダンスを少ない巻き線で得られることから軽量化と共にインダクタンスを低くでき、優れた高域特性を得られます。立ち上がり、立ち下がりのレスポンスに優れ、フルレンジユニットやワイドレンジユニットにも適した素材です。また、熱放射性が良く、コイル全体で放熱を行うためパワーハンドリングにも優れます。
2-B:コッパー・ボイスコイル
(2235H/E140)
最も一般的に用いられる銅線によるボイスコイルです。導通抵抗が低く同じインピーダンスでより多くのコイルが巻けるため、質量は増しますが駆動力を高めることができ、図太い低域はハイパワーウーファーやサブウーファーに適します。熱伝導率が良く、熱分布が均一化されるため高いパワーハンドリングと共にパワーコンプレッションを低く抑えられます。
また、ボイスコイル巻き線は、断面形状と巻き方によって以下の特徴を持ちます。
2-a:ラウンド・ボイスコイル 2-a:ラウンド・ボイスコイル一般的な丸線を用いたコイルです。安価で巻きやすく、広く使用されますが、導線間の空隙が多いため巻き線密度を高くできません。また、接着剤により放熱が妨げられるため耐熱性も良くありません。通常ウーファーでは巻数を増やすため2層から4層に巻いて使用します。
2-b:エッジワイズ巻きリボン・ボイスコイル 2-b:エッジワイズ巻きリボン・ボイスコイル扁平リボン形状に加工されたボイスコイルを縦長方向に密集させて巻き上げます。巻き線密度が高く、同じ磁束中により多くの導線を配置できるため高い感度が得られ、切れの良い再生音が望めます。また、コイル同士の接触面が大きいため熱伝導に優れ、コイルの発熱を均一に分散でき、パワーハンドリングも優れています。線材自体の加工と巻き上げに高度な技術が求められます。
エッジワイズ巻きリボン・ボイスコイルJBLでは一般的な1対4程度の扁平率のものから、さらに高いボイスコイル密度を得られる1対10を超える超扁平コイルまで実用化させています。この超扁平リボン・ボイスコイルは、Project K2 S9800のウーファー1500ALに採用されています。
2-c:フラット巻きリボン・ボイスコイル 2-c:フラット巻きリボン・ボイスコイル扁平リボン線を横方向に平たく巻いたボイスコイルです。ラウンドボイスコイルに比べ巻き線密度が高く、さらにコイル同士の接着強度が高いためコイル部の剛性も高められます。線材のコストはエッジワイズ巻きと変わりませんが、巻き加工が容易なため量産に適します。JBLでは高いパワーハンドリングが求められるカースピーカーに主に用いられています。

3:ボイスコイル・ボビン

ボイスコイル・ボビンには、狭いマグネット・ギャップ内でボイスコイルを真円に保ち、駆動部とコーン紙をロスなくつなぐ剛性の高さと、共振や共鳴を起こさない柔軟性、ボイスコイルの発熱に耐える高い耐熱性が求められます。JBLでは主に以下の素材が用いられています。

3-A:ペーパー・ボビン 紙を素材とした軽量で安価なボビンですが、耐熱性と剛性が低く、パワーハンドリングの小さな小型ユニットに用いられます。
3-B:クロス・ボビン 不燃布に耐熱性ボンドを含浸させたボビンです。ペーパーボビンより耐熱性は高いものの、剛性は低く、やはり小型ユニット向きの素材です。これに対し、グラスファイバーを基材とし、これに熱硬化樹脂を含浸させ耐熱性と剛性を高めた高耐熱クロスボビンは大型ユニットにも使用されています。
3-C:NOMEXTMボビン DuPONT社の開発したポリアミド系高耐熱ナイロン素材です。コーン紙やダンパーとの接着強度に優れるため、振動系全体の強度を高めることができます。
3-D:KAPTONTMボビン 同じくDuPONT社が商標を持つポリイミド系樹脂フィルムで、NOMEXよりさらに高い耐熱性能と剛性を誇ります。摩擦抵抗が低いため接着が難しく、機械強度を高めるために接合部の工夫が必要です。
3-E:アルミニューム・ボビン アルミニューム・フィルムを用いた剛性の高いボビンです。厚さが薄いためギャップ間隔の狭い磁気回路にも適応します。抜群の耐熱性と共に放熱効果に優れ、パワーハンドリングを高めることができます。しかし金属素材であるために、磁界内で渦電流が発生し電磁制動により低域出力を抑制してしまう点や、ボイスコイル断線時にショートさせる恐れがある点など、使い方に注意が必要な面もあります。

4:ダンパーの素材と形状

ダンパーは、コーンが正しいピストニック・モーションを行えるようボイスコイルボビンを支え、また静止時には正しくセンター位置を保持することが役目です。振幅特性をコントロールする重要なパーツであり、その選択がユニットのリニアリティーや歪みに大きく作用しますで、エッジなど他の振動系との相性から最適なコンプライアンスのダンパーを選択する必要があります。JBLウーファーには振幅特性に優れ、重たい振動系をしっかりと支えることができるコルゲーション・ダンパーが用いられます。素材にはフェノール樹脂などの熱硬化樹脂を含浸させた布を加熱成形したものが主に用いられています。

コルゲーション・ダンパー

JBLのフラッグシップ機K2を初めとする最新ユニットには、追従性に優れたNOMEXTMダンパー二枚を上下対称に配置し、正確なピストン運動とリニアリティーの改善を果たしたデュアルダンパーを採用しています。

デュアルダンパー

5:エッジの素材と形状

エッジの素材と形状は、歪み特性やリニアリティーに影響を与え、サウンドキャラクターにも重要な要素を持ちます。JBLウーファーには、主に以下のエッジ形状が用いられており、それぞれに適した素材が選択、採用されています。

5-A:ハーフロール・エッジ(2235H/2245H/1500AL/1200FE 他) ハーフロール・エッジ ハイ・コンプライアンスでロングトラベル設計が可能なため、現在最も多用されているエッジ形状です。ダンパーとの組み合わせでリニアリティーとレスポンスをコントロールします。

JBLではコンピューター解析により断面形状を最適化することで、さらなるリニアリティーの向上と歪みの改善を果たしています。ハーフロール・エッジに用いられる素材として、以下の種類があります。
  • ウレタンフォーム:
    最も軽く、最もコンプライアンスの高い素材です。柔軟性と伸縮性に優れ、大きな振幅を期待できますが、コーン紙を支持する力が弱いため正確なピストンモーションを得るためにはしっかりとしたダンパーとの組み合せが必至です。応答性が優れており、エッジ鳴きや固有のカラーレーションも少ないためスタジオモニターなどに多用されています。柔らかな素材で経年変化に弱く、石油化学系素材であるために加水分解を起こす傾向があります。
  • ラバー:
    ウレタンより質量が重く、コンプライアンスも劣りますが伸縮性があり良好な振幅特性を持ちます。コーン紙の動きをダンプする傾向があるため、応答性ではウレタンに劣りますが腰のある太い音を特徴とします。JBLでは主に小口径ウーファーに用いられます。また、経年変化にも比較的強いためカースピーカー用としても広く用いられます。ブチル、ニトリルなど様々な素材があります。
  • EPDMフォーム・ラバー:
    ウレタンフォームの軽量、ハイコンプライアンスと、ラバーの高い耐候性を合わせ持った発泡性ゴム素材です。ゴムエッジに比べコーンをダンプする傾向が少なく、良好な応答性を示します。K2を初めとする最新設計のJBLシステムに採用されています。
  • クロス:
    布をロール状に成形したエッジです。軽量素材ですが、柔軟性を保ちエッジ鳴きを抑えるためにダンプ材を塗布するため、これにより質量がコントロールされます。素材の延びが少ないため最大振幅付近で歪みが増加します。このため振幅のあまり大きく無いユニットに主に用いられます。耐久性の高い素材です。
5-B:マルチプル・ハーフロール・クロスエッジ(2225H/E120/E130/150-4H 他) マルチプル・ハーフロール・クロスエッジ クロス素材を複数のロール状に成形したエッジです。歯切れの良い音が特徴で、高能率ユニットに用いられます。耐久性が高く、楽器用、PA用などのプロ用システムに多様されています。
5-C:アコーディオン・プリーツ・クロスエッジ(2213H) アコーディオン・プリーツ・クロスエッジ ローコンプライアンスながらロングトラベルが可能な布エッジです。エッジ鳴きを防ぐためダンピング材を含浸させてあります。
エッジ幅が広く、輻射により中高域の特性にディップが生じる傾向がありますが、芯のしっかりした腰の座った音が特徴です。JBLでは4312シリーズのウーファーに用いられ、その独特のキャラクターが人気の元となっています。エッジそのものは耐久性が高く長期使用に耐えますが、コンプライアンスの低さを補うために比較的柔らかいダンパーと組み合わせる必要があり、ユニットとしての寿命はダンパー側に依存します。
5-D:ワンピース・フィックスド・エッジ(E155/D130の初期タイプ) ワンピース・フィックスド・エッジ JBL初期の製品に見られた、コーン紙の上端を波形状にプレス成形したコーン一体型のエッジです。エッジ鳴きを防ぐためにダンプ材を塗布してありますが、大振幅は望めず、初期動作が鈍く直線性もあまり良くありません。
高域にエッジの共振によるピークを生じる傾向がありますが、明るくドライな音色を持ちます。

6:コーン紙の形状

コーン紙の形状は主に指向性と高域特性に深く関わってきます。JBLのコーンは以下に大別されます。

6-A:リブ付きストレート・コーン
(2235H/2245H/1500AL/1200FE 等)
円錐型コーンに同心円状にコルゲーション・リブによる補強を施したコーンで、分割振動が少ないためJBLでは大口径ウーファー用として最も多く用いられています。コーンの絞り角度によって指向性をコントロールできますが、強度と音色も同時に変化します。
リブ付きストレート・コーン
6-B:ストレート・コーン
(150-4H/E145)
直線的断面形状の円錐型コーンです。強度はコーン紙の素材と厚さに依存する部分が多く、また十分な強度を確保するためには深い絞り角度が必要になります。このため、指向性を広く確保することが難しく、ベース用などの楽器用に主に用いられます。
ストレート・コーン
6-C:カーブド・コーン
(LE8T-H/2220H/E130/2213H/2251J)
エクスポネンシャル(放物線)形状の断面を持つコーンです。構造的な強度が高くコーン紙を薄くできるため高い感度が得られます。広い指向性と優れた高域特性を持ち、フルレンジユニットやミッドバスユニット、楽器用スピーカーなどに用いられます。低域専用に用いる場合には、さらにコルゲーションによる補強を施します(2213H)。
カーブド・コーン

7:コーン紙素材

コーン紙の素材には振動系の軽減のための軽さと、分割振動を防ぐための剛性、そして使用帯域内で固有振動によるカラーレーションを付加しないための適度な内部損失など、一見相反する特性が必要であり、その選択はユニットのサウンドキャラクターを決定付ける最も重要なファクターの一つです。現在様々な素材が用いられていますが、おおよそ以下に大別することができます。

7-A:ペーパーコーン パルプを主原料とした代表的な振動板素材です。パルプ繊維の長さや密度、パルプ自身の原材料などにより、幅広いチューニングが行えるのが特徴です。JBL では永年の経験から用途に合わせた最適なチューニングが行えるため、価格帯を問わずペーパーコーンを広く採用しており、その過渡特性に優れたタイトな低域がJBLの特徴ともなっています。また、剛性を高める為にグラスファイバー(ME150HS/2251J)やケブラー繊維(1200FE)を混入したり、アクアプラスを塗布(1500AL)することで分割振動を抑えるなどの工夫を加えています。また、自然乾燥によって繊維の結合を高めたプレミアム・ペーパーコーンをフラッグシップK2 S9800とS143のウーファーに使用しています。
7-B:高分子系コーン ポリプロピレンに代表される樹脂系コーン素材です。内部損失が大きく共振ピークが低いため歪みの少ない特徴を持ちますが、ペーパーコーンに比べ質量が大きく能率が低いことと、過度特性が劣るため、JBLでは一部のシステム(Ti-Kシリーズ)のウーファーまたはミッドレンジにしか使用されていません。
7-C:金属系コーン アルミやチタンに代表されるコーン素材です。剛性が高いため薄く軽量化が図れますが、内部損失が小さく共振ピークが大きいため大口径ユニットには好ましくありません。JBLではミッドレンジ用としてチタンを採用(804Ti)しています。

8:センタードーム

センタードームはマグネットギャップ内に異物が入り込むのを防ぐ役割からダストキャップとも呼ばれますが、ユニットの高域特性を左右する重要なパーツです。

ウーファー用にはスムースな高域減衰特性を持たせるためにコーン紙と同じ厚手のペーパードームを用います(2235H/1500AL)。ミッドバス・ユニットのように中高域特性も重視したユニットには、薄いペーパードームが使われます(2123H/2251J)。さらに、フルレンジユニット(LE- 8T)やワイドレンジユニット(E130)には、センタードームを高域用ダイアフラムとして積極的に活用するためにアルミニューム・ドームが用いられます。逆に、サブウーファーなど中高域特性をまったく必要としないユニットでは、センタードームをボビン径よりも大型化することで高域減衰を早めると共に、コーン紙にリブを渡したような構造を採ることによってコーンの強度を高める働きを持たせています(HB1500)。

9:フレーム

フレームフレームは、重い磁気回路を支え、ユニットをバッフルに強固に固定するためのベースです。各パーツの位置関係を厳格に保ち、振動系の正確なピストン運動を助ける基盤となるパーツで、何よりも高い剛性が求められます。安価なユニットでは鉄板をプレスした物やプラスチックが用いられますが、JBLでは古くからアルミダイキャストをフレームに用いてきました。これは、素材の剛性が高く、加工精度が高い事に加え、形状の自由度が高いため構造面からも理想を追求することができるからです。

フレームはコーン背面の風圧のさまたげになってはならず、できるだけ小さな表面積で重たい磁気回路を保持する必要があります。このため、リブを配した複雑な構造を必要とします。磁気回路のヒートシンクを兼ねたバックカバーと一体となり、背圧を見事にコントロールしたK2用ウーファー1500ALのフレームの持つ機能美は、JBL半世紀の集大成とも言える物です。


JBLテクノロジー

JBLスピーカーシステムの多様なキャラクターは、これらユニットに用いられるパーツの素材や形状、機構などの組み合わせにより生み出されたものです。用途に合わせて数限り無い選択肢の中から最適なパーツを選びだし、目的のサウンドを生み出す技、これこそが伝統に培われたJBLテクノロジーの神髄です。これらJBLテクノロジーの集大成として、最新の1500FEウーファーユニットの構造図を示します。巻頭の2225Hと比較していただくと、進化の跡がお解りいただけると思います。

  • JBL ウーファーユニット構造図
  • 1500FE搭載のスタジオモニター/Model 4348
    1500FE搭載のスタジオモニター
    Model 4348

1500FEの磁気回路には、ポールピースセクションを上下に延長することで上下対象磁界を形成しながら時期飽和を減少させ、ギャップ内のフラックスレベルを高めたニュージェネレーションSFG磁気回路を搭載しています。さらに、コッパー・ギャップ・リングとアルミ・ショートリングを装着することで高調波歪を低減。NOMEXデュアルダンパー、EPDMフォームラバー、アクアプラス・コーティングのピュア・パルプ・コーンの採用など、まさにJBLテクノロジーの結晶です。

[2] JBL SFG 磁気回路

JBLでは、スピーカーユニットの心臓部である駆動部の磁気回路に、独自のSFG(Symmetrical Field Geometry)磁気回路を採用しています。これは、ダイナミック型スピーカーの持つ歪みを激減させる効果を持つ画期的な磁気構造です。


なぜSFGが開発されたのか

JBLは、創設以来、コンプレッション・ドライバーや大口径コーンユニットのマグネットとしてアルニコ磁石を用いて来ました。これはユニットに高密度の磁束と低歪みをもたらし、JBLユニットの優れた特徴の一つとして捕らえられて来ました。

しかし、70年代後半になると、アルミとニッケル、コバルトの合金であるアルニコ(ALNICO)マグネットの重要な構成素材であるコバルトの産出が激減し、さらに軍事用としての需要拡大などから入手が困難になります。スピーカー製造メーカーの多くが安価で入手の容易なフェライト磁石に仕様変更していく中、JBLはその性能と音質を維持する必要から、最後までこの流れに抗してアルニコを支持し続けました。

しかしその一方で、JBLは30年以上に渡り磁気回路を素材面のみならず構造面からも様々に研究して来ました。そしてアルニコ磁気回路の持つ優位点の研究からついにフェライト磁気回路の持つ弱点を突き止め、構造面からその弱点を解決し、逆にフェライト素材の優位点を最大限に活用する方法を編み出したのです。それがSFG磁気回路です。この、従来のフェライト磁気回路のみならずアルニコ磁気回路をも上回る低歪み磁気回路の開発を契機に、JBLはその後の総てのユニットにこのSFG磁気回路を搭載して行きます。そして、今やSFG磁気回路はJBLの高性能ユニットにとって必要不可欠な技術要素となっています。


コーン型スピーカーユニットの基本構造

コーン紙の形状は主に指向性と高域特性に深く関わってきます。JBLのコーンは以下に大別されます。

JBL ウーファーユニット構造図

図はJBLの代表的ウーファーユニット2225Hのカット図です。色の着いた部分がSFG磁気回路の構成部品です。センターポールピース全体の形(太実線)がアルファベットの"T"の形に似ていることから、T型ポールピースと呼ばれています。


非対称磁界の改善

次に、アルニコマグネットを用いた磁気回路と、一般的なフェライト磁気回路、そしてSFG磁気回路の構造を比較してみます。
図は、それぞれの磁気構造の断面を左半分だけ表示したものです。

磁気回路と形成磁界の違い

アルニコ磁気回路は、アルニコマグネットの強力な磁力を利用して、コンパクトなマグネットを磁気回路の中心部に抱き込んだ内磁型と呼ばれる構造をとっていました。そしてこのマグネットの上にトッププレートと厚さの等しいポールピースを乗せ、ギャップ部に磁界を形成します。プレートとポールピースの厚みが等しいため、ギャップ部には点線の通り上下対称形の磁界が形成されます。

これに対し、フェライト磁気回路では、フェライトマグネット自身の磁力が弱いため、十分な磁力を持つマグネットを磁気回路内に納めることができず、大きな直径のドーナツ型のリングマグネットを外周部に持った外磁型と呼ばれる構造が必要です。この時、一般的なフェライト磁気回路では、ギャップ形成に必要な直径を持つ、単純な円柱形のポールピースを用いていました。しかし、この磁気構造では、トッププレートとポールピースの厚さが異なり、ギャップ部の磁界は下側だけ磁束の集中を欠いた上下非対称の磁界を形成します。この非対称性がボイスコイル、ひいてはコーン紙の上下(プッシュプル)動作の非対称性を生み出し、特に振幅の激しい100Hz以下の周波数において大量の二次高調波歪みを発生させます。この歪みこそが永年フェライトマグネットを用いた磁気回路の欠点として指摘されて来た、低音の明瞭さを損なう元凶だったのです。

SFG磁気回路では、同じ外磁型の磁気構造を採りながらも、"T"型のポールピースを装着することにより、ギャップ部の厚みを揃え、上下対称の磁界を形成させることに成功しました。


磁気変調歪みの改善

フェライト磁気回路の研究において、歪みの増加につながるもう一つの現象が確認されました。それは、磁気回路が形成する直流磁界と、この磁界内を上下運動するボイスコイルの発生する交流磁界との間に起こる、一種の相互干渉に起因する歪みです。これはアルニコ磁気回路においても生じますが、アルニコ磁気回路の場合はポールピース直下に透磁率の低いマグネット素材があるため、この相互作用は小さく、歪みも低レベルになります。しかし、フェライト磁気回路ではここに透磁率の高い鉄素材があるため、この相互作用による磁気変調が大きな歪みとなって表れるのです。この歪みは100Hzから1kHzの帯域において、 5dB〜10dB程もアルニコ磁気回路よりも大きくなります。主に中低域の透明さや明快さを損ない、濁った暗い音質となって表れるため、JBLスピーカーとしての特質を損なう、フェライト磁気回路特有の歪みとして見過ごせません。

しかしJBLでは、すでに30年以上も前に、LE8Tというフルレンジユニットの設計の際に同様の問題に対する対策を試みていました。これは、ショートリング、またはファラデーループと呼ばれる導電性のリングを磁気回路内に設置することで磁気変調エネルギーを電流に変換し、電気的にショートさせることで吸収してしまう手法です。JBLはエネルギー不滅の法則を利用したこの巧みな構造によって磁気変調歪みを一般的なフェライト磁気回路よりも大幅に低減し、さらにはアルニコ磁気回路をも上回る超低歪み特性を獲得しました。

磁気変調歪みの改善

SFG磁気回路の歪み低減効果

図はJBLの代表的な12″(30cm)径ウーファーユニット「128H」の振動系を用いて、磁気回路のみ入れ換えて測定した周波数特性と二次高調波歪みの周波数分布図です。歪み特性は周波数特性との比較を容易にするため、20dB大きく表示されています。また、歪みの測定を容易にするためユニットへの入力を10Wまで上げて測定しています。

SFG磁気回路の歪み低減効果

アルニコ磁気回路では中低域の歪みが基本周波数特性に対し40dB以上確保されています。これは歪み率にして1%以下に相当し、良好な特性であることを示します。

一般的なフェライト磁気回路ではこの中低域での歪みの増加が顕著で、基本特性との差はおよそ35dBまで低下しています。これは約2%の歪み率に相当します。

これに対しSFG磁気回路では、歪みがスケールの外まで落ち込み、基本特性との差は50dB以上におよびます。一般的なフェライト磁気回路に比べ 15dB、アルニコ磁気回路に比べても10dB以上の改善が図られています。この時の歪み率は実に約0.3%以下となり、同口径のコーン型ユニットとしては驚異的な低歪みとなります。


その他の改良点

SFG磁気回路では歪の低減以外にも、磁気構造にまつわる様々な問題に取り組み、これらを改善することでユニットの性能をさらに高いレベルへ昇華させています。

磁気回路の熱対策

フェライトマグネットはアルニコマグネットに比べ、逆温度係数が大きく温度上昇に伴う磁力低下が大きい素材です。一般的なフェライト磁気回路ではバックプレートに打抜き加工による鋼鉄板を用いていますが、JBLではここに質量の大きな鋳造金属プレートを用いました。これは磁気回路のヒートシンクの役割を持ち、フェライトマグネットの磁力低下を防いでいます。さらにJBLでは、センタードーム内の圧力上昇による周波数特性のゆがみを防ぐため、センターポールピース中央を貫通する大きな通気孔を設けています。この通気孔がクーリングベントとしての役割も担い、ボイスコイルとマグネットの冷却効果を上げています。これにより、一般的な使用環境ではもちろん、コンサートPAなどの過酷な使用環境でさえも、JBLスピーカーは磁力低下による出力の低下をほとんど起こしません。

センターベントのクーリング効果
センターベントのクーリング効果

さらに近年では、3つの通気孔を設け、コーンとボイスコイルの上下運動を利用して強制的に冷却風を招き入れ、ボイスコイルを直接冷却するベンテッド・ギャップ・クーリング(Vented Gap Cooling)システムを開発し、ボイスコイルの温度上昇に伴うパワーコンプレッションを防ぐとともに、マグネットの温度上昇による磁力低下を防いでいます。

VGCシステムのクーリング効果
VGCシステムのクーリング効果

磁気回路の高効率化

SFG磁気回路に用いられる鋳鉄製バックプレートは、一般の鉄板打抜きバックプレートでは得られない複雑な造形を持っています。これはボイスコイルボビンの底当たり(ボトミング)を防ぎ振幅の拡大を図るとともに、マグネットの磁力を効率的にポールピースに導き、ギャップ部への磁力集中を図るためにデザインされたものです。近年ではここにコンピューターによる有限要素解析技術を取り入れ、その独自のフォルムによって同じマグネットでより高い磁束密度をギャップに提供することを可能とし、能率の改善を果たしています。


SFG磁気回路の応用

JBLのSFG磁気回路とは、上下対称磁界を造り出すためのT型ポールや、磁気変調歪みを取り除くためのショートリングなど、個々の技術を指すものではなく、これら歪み低減のために用いられた様々な技術要素を統合した総称です。その技術はたゆまぬ研究により、今日もなお進化を続けています。

その後の研究でSFG磁気回路はフェライト磁気回路以外にも、最強の磁力を誇るネオジュームやアルニコ磁気回路にさえも歪み低減に効果があることが確認されました。現在はこれらのマグネットを用いた磁気回路にも応用され、素材の持ち味を引き出しながらさらなる低歪み化を実現させています。

JBLのフラッグシップ機Project K2 S9800のために開発されたアルニコ・ウーファーユニット1500ALには、アルニコの持つ大出力時の減磁作用を防ぐための大型アルミショートリングや銅/スチール積層インナーギャップ・リングなど、アルニコの弱点を徹底的に排除し、その特徴を存分に発揮させるために最新設計のSFG磁気回路を搭載しています。

  • SFG磁気回路を搭載したアルニコ・ウーファー 1500AL
    SFG磁気回路を搭載したアルニコ・ウーファー 1500AL
  • SFG磁気回路を搭載したアルニコ・ウーファー 1500AL


※図の色の着いた部分がSFG磁気回路の構成パーツです。

[3] なぜ SFG が開発されたのか

ダイナミック型スピーカーにとって、マグネットはその駆動力を決定付ける最も重要なパーツです。JBLでは、スピーカーユニットの磁気回路としてフェライトとネオジューム、アルニコの3種のマグネット素材を用い、それぞれの特徴を活かした磁気回路設計を行っています。


マグネット素材の変遷

JBL では創設以来、コンプレッション・ドライバーや大口径コーンユニットに用いる永久磁石の素材としてアルニコ(ALNICO)マグネットを用いて来ました。アルミニュームとニッケル、コバルトを主原料とする強力なアルニコ・マグネットは、高密度の磁束を提供することからJBLユニットのシンボル的存在でした。

しかし、1970年代後半から、このアルニコの原料であるコバルトの入手が難しくなり、その代用素材として注目されたのがフェライト・マグネットです。バリュームまたは炭化ストロンチュームとマグネタイトをベースとしたセラミック素材、フェライト・マグネットは、アルニコと比べて磁力が弱く、磁気回路が大型化します。このため磁気回路の構造にも違いが生じ、その構造の違いを原因とする歪みが発生します。この歪みを取り除くためにJBLではSFG磁気回路を開発しました。大入力により減磁作用を起こすという致命的な欠点を持つアルニコに変わり、以後JBLはプロ用を含む総てのスピーカーシステムのフェライト化を推進しました。

その後もマグネット素材の研究は続けられ、1988年には新しいマグネット素材、ネオジュームをコンプレッション・ドライバーに使用します。ネオジュームと鉄とボロンの合金(Nd-Fe-B)であるネオジューム・マグネットは、磁性素材として最強の磁力を誇ります。しかし高温に弱い弱点を持ち、発熱の大きな低音用ユニットへの使用は不可能とされていました。JBLではプロ用機のために開発された独自のボイスコイル冷却機構、ベンテッド・ギャップ・クーリング(VGC)システムを応用し、マグネットの温度上昇を食い止めることで世界で初めてこのネオジュームマグネットをウーファーユニットの磁気回路に使用することに成功、フラッグシップ機Project K2 S9500と、スタジオモニターM9500に搭載しました。

そして、2001年には再びアルニコマグネットが注目されます。JBLはアルニコマグネット特有の躍動的なサウンドを現代に呼び覚ますために、大入力時の減磁というアルニコの欠点を克服する斬新な磁気回路を完成させ、新たな世紀を担うフラッグシップ機Project K2 S9800に搭載しました。


マグネット素材の持つ特徴と使いこなし

マグネットは、素材によって様々な性質の違いがあります。スピーカーユニットの設計には、これらを理解し、その特徴を最大限に活かす磁気回路設計が重要です。

表は、それぞれのマグネット素材の主な特徴を一覧にしたものです。

マグネット素材 最大B-H積 比重 逆温度係数 磁束安定度
フェライト 2〜3MGOe 5.1g/cm2 -0.2%/℃ 高い
アルニコ 5MGOe 7.4g/cm2 -0.02%/℃ 低い
ネオジューム 35〜45MGOe 7.5g/cm2 -0.1%/℃ 高い

これらの特徴を詳しく見てみましょう。


マグネット素材による磁力の違い

マグネットは、その素材により磁力の強さが異なります。その強さは磁束密度(B)と磁界の強さを示す保持力(H)を示したB-Hカーブで表わされます。磁束密度は電気の世界でいう電流に、保持力は電圧に例えられ、これらの値から得られる最大エネルギー積(B-H max)が電力に相当する磁石のパワー値です。図はJBLがスピーカーユニット用として用いている3種のマグネット素材のB-Hカーブを示したものです。

マグネットの磁力特性

最も一般的である、フェライトマグネットの最大エネルギー積はおよそ2〜3MGOe(メガ・ガウス・エルステッド)程度であるのに対し、アルニコは約 5MGOeと約2倍の磁力を持ちます。さらにネオジュームでは35〜45MGOeと、フェライトの10倍以上、アルニコに比べても8倍の値を示します。このことは、同じ磁力を得るためにフェライトに比べてアルニコは1/2、ネオジュームはなんと1/10の質量で済むことを意味します。体積比ではさらに、フェライトに対しアルニコは1/3、ネオジュームは1/15のサイズで同等の磁力を得られるのです。

また、このB-Hカーブからもう一つの特徴がわかります。保磁力はマグネットの厚さに影響し、磁束密度は断面積に係わりを持ちます。このため、保持力が小さく、磁束密度の大きなアルニコは、直径は小さくて済みますが、厚みの厚いマグネットが必要になります。反対に、保持力が大きく、磁束密度の小さなフェライトは、薄くても直径の大きいマグネットが必要です。アルニコが内磁型磁気回路に、フェライトが外磁型磁気回路に向いていることがここからも判ります。保持力、磁束密度共に大きいネオジュームでは、直径、厚み共に小さくできます。

ネオジュームマグネットの強力な磁力を利用する事で、JBLは中高音用コンプレッション・ドライバーの磁気回路のコンパクト化に成功しました。このことがドライバーの位相特性を管理するフェーズプラグの短縮化を可能にし、歪みの低減に貢献しています。また、1″径ダイアフラムを用いた超高域用コンプレッション・ドライバー"045Be"の開発は、この小型強力なネオジュームマグネット無しには成し得なかったことでしょう。


磁束の安定性

磁気回路の動作点と磁気変調

マグネットは磁気回路内で常に一定の磁力を維持することが理想です。しかし実際には、ボイスコイルの上下動によって起こる動作点のぶれが磁気変調となって磁束を乱します。

フェライトとネオジュームはB-Hカーブが直線に近いため動作点がぶれた際に起こる磁気変調がリニアであり、またカーブが水平に近いために変調が少ない利点を持ちます。

これに対しアルニコは、B-H曲線が大きな弧を描いており、動作点のぶれによる磁気変調が大きくしかもリニアではありません。また、さらにこのぶれが大きくなるとアルニコマグネット特有の減磁領域に入り、磁力を急激に失います。

この減磁現象こそが当時JBLがアルニコ磁気回路の採用を全面的に廃止した理由です。

JBLは動作点を安定させ磁気変調を防ぐために独自のSFG磁気回路を開発しました。さらにこれに改良を加え、アルニコマグネットの動作点の変動を徹底的に抑え込む手法を考案し、致命的であったアルニコの減磁の問題と非直線性の問題を解消しました。アルニコマグネットの復活は、このような技術背景があって始めて実現されたのです。


比重

セラミック素材であるフェライトに比べ、合金であるアルニコとネオジュームは大きな比重を持ちます。しかしネオジュームはその強力な磁力ゆえサイズを小型化でき、結果として軽量でコンパクトな磁気回路が設計できます。アルニコの場合はこの比重が物を言います。低域用ユニットではこの比重の重いアルニコを内磁型磁気回路の中心部に抱き込む構造を採ることで重たいボイスコイルを駆動する際に起こる反作用を質量で吸収し、トランジェントの向上を図ることができます。逆にフェライトは比重が軽いため、他の素材に比べ重量比以上に大きな体積のマグネットを必要とします。


逆温度係数

マグネットはすべて、環境温度が上昇すると磁力が弱まる逆温度特性を持っています。中でもフェライトは逆温度係数が大きく(-0.2%/℃)、使用温度が 100°上昇すると、磁力は20%も減衰します。アルニコが最も温度安定性に優れ(-0.02%/℃)、同じ100°の温度上昇にもわずか2%の磁力減衰しか起こしません。ネオジュームはこの中間的な値(-0.1%/℃)を示しますが、温度が80℃を超えると再び温度を下げても低下した磁力が回復しなくなり、200℃を超えると全く磁力を失ってしまいます。

スピーカーの磁気回路の中では、ボイスコイルが大きな熱の発生源になります。パワーアンプから送り込まれる電力が、音に変換されてスピーカーから出力されるのは能率90dBのスピーカーでもわずか1%未満です。残りの99%のほとんどは、機械的損失や熱として浪費されるのです。このため、ボイスコイルの温度が200℃を超えることも珍しくなく、マグネットは常にこの高熱にさらされています。

JBLでは磁気回路にセンター・ベント設計やベンテッド・ギャップ・クーリング・システムなどの冷却機構を取り入れ、温度上昇を防いで磁力減衰を抑えています。これにより、熱に弱いネオジュームマグネットを発熱の大きなウーファーに使用することも可能にしています。


マグネット素材の選択

このように、マグネット素材はそれぞれに優れた面と弱点、または欠点を持ちます。JBLではこれら素材の持つ欠点を徹底的に分析し、それを克服した上でその素材の持つ優位性を引き出す工夫を行っています。単なる流行や懐古趣味的発想ではなく、素材の選択には常にその必然性があるのです。

[4] スピーカーシステムの低音再生能力について

スピーカーシステムの低音再生能力は、低域ユニットが1ストロークで動かすことのできる空気の体積に比例します。つまり、良質な低域を十分なエネルギーで再生するには、大きな振動板面積と大きなストロークが必要になります。


ユニット径と低域再生能力

下表は、ウーファー口径別の振動板面積と、標準的な許容振幅、それらを掛け合わせることで得られる一振幅あたりの振動体積を表にした物です。

ユニット径(呼径) 振動板面積 許容振幅 振動体積 振動体積比
inch cm cm2 cm cc 対15°(%) 対4°(倍)
15° 38cm 1,134cm2 4.0cm 4,534cc 100 57
14° 35cm 962cm2 3.5cm 3,366cc 74 43
12° 30cm 707cm2 3.0cm 2,120cc 47 27
10° 25cm 491cm2 2.5cm 1,227cc 27 16
20cm 314cm2 2.0cm 628cc 14 8
6.5° 16.5cm 214cm2 1.5cm 321cc 7 4
12.5cm 123cm2 1.0cm 123cc 2.7 1.6
10cm 79cm2 1.0cm 79cc 1.7 1

※上記振動板面積は、単純化のためユニット径から計算した簡易値です。厳密には、ユニット径からフレームやエッジ外周部などの無効部分を除いた有効振動板面積から求めます。
※上記許容振幅はJBLの代表的ユニットを例にした平均値です。

上記表から、大口径ユニットがいかに低域再生に有利かが判ります。低域再生能力は空気を動かす体積に比例しますので、ユニット径の大小から受ける印象以上にその再生能力には大きな差が生じるのです。

ユニット径と振動体積の関係


複数のユニットによる低域再生

小口径ユニットで大口径ユニットと同等の振動体積を得るために、複数の小口径ユニットを同時駆動させる方法があります。上の振動体積比から、38cm径ウーファーと同質の低域を得るためには、30cm径ユニットで2本、25cm径ユニットで4本、20cm径ユニットでは7本必要になります。さらに、10cm径ユニットでは実に50本以上のユニットが必要な計算になり、これらのユニットを有効に働かせるために必要なエンクロージャー容積を考えれば、38cmユニットを1本使用したシステムよりはるかに大がかりなシステムとなるでしょう。


歪みと過度特性

小口径ユニットで大口径ユニットに等しい低域を得ようとすれば、大口径ユニット以上に大きな振幅をさせる必要が生じます。スピーカーの発生する歪は、振動板の振幅が許容振幅の限界に近くなる程増える傾向がありますので、大振幅再生は歪の増加につながります。逆に言えば、大口径ユニットは小口径ユニットに比べ同じ低域を小振幅で再生することができるため、歪の少ない良質な低域を再生することが出来ます。さらに、ストロークが短くて済むため過度特性にも優れるという利点があります。大口径システムは低音再生能力を振幅で稼ぐ必要が無いので、小音量で聴いても音痩せせず、豊かな低音が得られるのです。


リニアリティーとダイナミックレンジ

一般的に、大口径ユニットは小口径ユニットに比べ口径の大きなボイスコイルを持ちます。ボイスコイル径は大きい程消化できるパワーが大きくなり、熱に起因するパワーコンプレッションが少なくなります。つまり、パワーロスが少なくリニアリティーに優れるというメリットを持ち、連続した低域出力にも安定した動作が行えます。さらに、大口径ウーファーではダンパー径も大きくなり、機械的動作の面でも大きなリニアリティーを確保できます。この事は、大きなダイナミックレンジを必要とする音楽ジャンルの再生には特に有利な資質と言えます。


大口径システムへのこだわり

以上は、ウーファーユニットの口径から得られる低域の物理的能力を考察したものです。ただし、聴感的な低音感はユニットの持つ他のパラメーターやキャビネット構造、さらに周波数特性や過度特性など、チューニングによる演出的要素も大きく影響します。また、大型ユニットで大量の空気を動かすためには強力なボイスコイルや磁気回路が必要であり、これを駆動するアンプにも大きな駆動力が求められます。一方、小口径システムには小口径システムなりの低音の表現があり、設計やチューニングの巧みさから、大きさ(小ささ)を感じさせない豊かな低音を再生するシステムもあります。物理的特性と感覚的な聴感とは必ずしも一致しない、ということを念頭に置きながらも、なお低音再生には大口径システムが有利である、という物理的事実だけは認識しておいていただきたいと思います。JBLが大口径システムにこだわる理由が、まさしくここにあるのです。

[5] スピーカーのインピーダンスとアンプとの組み合わせについて

スピーカーシステムは、それぞれに固有のインピーダンスを持っています。このスピーカーシステムの持つインピーダンスと、組み合わせるパワーアンプに表示されている推奨負荷インピーダンスとの関係について説明します。


スピーカーのインピーダンスとは

スピーカーの持つ電気抵抗のことで、単位はΩ(オーム)です。電気の流れ難さを表す数値で、数字が大きい程電流が流れ難く、数値が小さい程流れ易いことになります。

通常電気抵抗とは、直流に対する抵抗値を指します。これに対し、インピーダンスとは、音楽信号のような交流信号に対する抵抗値を言い、周波数によってその値が連続的に変化します。スピーカーのインピーダンスも同様で、入力される音楽信号の周波数によってその値が変化します。つまり、スピーカーそれぞれに電流の流れ易い周波数と、流れ難い周波数がある、ということです。このように連続的に変化する値ですので、特定の数値をスペックとして挙げることができません。このため、カタログスペックには最も電流が流れ易く、大きなエネルギーを必要とするためにアンプへの負担が大きい、低音域での最小値を表示します。これを定格インピーダンスと呼びます。下図の例では150Hzでの値6Ωがそれです。通常、スピーカーシステムのインピーダンスはこの定格インピーダンスより下がることは少ないので、使う側はこの値だけを考慮しておけばよい、ということになります。

3Wayバスレフスピーカーのインピーダンス特性


パワーアンプの推奨インピーダンスとは

パワーアンプもそれぞれ固有の出力インピーダンスを持ちます。しかし、通常トランジスタ・アンプの出力インピーダンスは、0.0数オームです。この値は必ずしもカタログに明記されていません。カタログスペック、またはアンプの出力端子部に表示されているアンプのインピーダンス表示とは、この出力インピーダンスとは異なり、メーカーが推薦するスピーカーのインピーダンスの使用範囲を表したもので、推奨インピーダンスと呼ばれています。アンプは設計の際、その出力電流値や電源容量などの最大値を決める為に計算上スピーカーのインピーダンスを規定しておく必要があります。この計算上の規定値を元に推奨インピーダンスが決められています。


アンプの出力特性

パワーアンプの出力は、そこに接続されるスピーカーのインピーダンス特性に左右されます。スピーカーのインピーダンスの高低によって出力電流の流れ方が変わるためです。アンプにスピーカーをつなぐ際、そのスピーカーのインピーダンスが高い(数字の値が大きい)程アンプから出力電流が流れ難くなり、アンプから取り出せる最大パワーは少なくなります。逆に、インピーダンスの低い(数値が小さい)程、アンプの出力電流は流れ易くなり取り出せるパワーは大きくなります。低いインピーダンスまで十分に駆動できる理想的な電源を持ったアンプ(一部のハイエンド製品のような)の出力特性とインピーダンスの関係を表に示します。

スピーカーのインピーダンスとアンプの定格出力、電圧との関係

インピーダンス 12Ω 16Ω 出力電圧
定格出力 50W 33.3W 25W 16.7W 12.5W 14.1V
100W 66.7W 50W 33.3W 25W 20V
150W 100W 75W 50W 37.5W 24.5V
200W 133W 100W 66W 50W 28.3V
300W 200W 150W 100W 75W 34.6V
400W 266.7W 200W 133.3W 100W 40V

※表は、4Ω負荷まで完全駆動できるアンプを想定した理論値です。

一方、アンプの出力表示には、一般に定格出力とダイナミック出力(または実用最大出力)が用いられます。定格出力とは、歪を発生させずに連続して長時間出力し続けることができるパワー値を言います。しかし、音楽信号は音量が常に変化するため、アンプは瞬間的にはこの定格出力以上のパワーを発揮させることができます。このことを考慮して測定されたものがダイナミック出力で、定格出力よりも20%〜40%大きな数値を表示できます。


アンプとスピーカーの関係

アンプにスピーカーをつなぐ際、アンプの推奨インピーダンス値よりもインピーダンスが高いスピーカーを組み合わせた場合は、先の表の通り取り出せる最大パワーは目減りしますが、アンプの動作や音質には悪影響はありません。

では、アンプに表示されている推奨値よりインピーダンスの低い(数値が小さい)スピーカーを組み合わせた場合、どのようなことが起こるのでしょうか。スピーカーのインピーダンスが低いと、アンプの出力は流れ易くなり取り出せるパワーは大きくなります。しかし、実際のアンプの出力素子や電源回路には取り出せるパワーに上限があるため、インピーダンスの低いスピーカーを使ってむやみに音量を上げ過ぎるとアンプに負担をかけることになります。

先に述べた通り、アンプに表示されている推奨インピーダンスは、そのアンプの最大定格を満足させるために規定された数値です。実際には、アンプの最大定格は出力電力(W)ではなく、出力に流せる最大電流(A)で決定されます。この最大電流を超える電流が出力に流れようとすると、アンプは回路を過電流から守るために保護回路を働かせ、出力を制限したり音声回路または電源を一時的に遮断します。逆に言えば、そのアンプの最大電流を超えた使い方をしない限り、低いインピーダンスのスピーカーを使用してもアンプの動作には悪影響はありません。

実際のアンプのスペックを元にこのことを計算で示してみましょう。

実用最大出力が100W@6Ωというスペックのアンプに、4Ωのスピーカーを接続した場合を想定してみます。

電流値の計算式:I=√W/R(Iは電流、Wは電力、Rはインピーダンス) から、6Ω負荷100Wの最大出力時、アンプの出力部には √(100W÷6Ω)≒4.1A 4.1Aの電流が流れます。これがアンプの最大出力電流です。つまり、このアンプはこの値までは電流を流しても大丈夫、という数値です。

では、このアンプで4Ωのスピーカーをドライブした場合はどうなるでしょう。 出力値の計算式:W=I2R から、最大電流で4Ωのスピーカーを駆動すると、 4.1 A2×4Ω=67.24W 最大電流で約67Wの出力が得られます。つまり、この出力の範囲であればアンプに負担をかけずに安全に使用する事ができます。通常、4Ωのスピーカーは6Ωのスピーカーより能率が高いため、この出力で十分な音量が得られるはずです。

では、更にボリュームを上げ続けると、どのようなことになるでしょうか。 電圧の計算式:V=√WR から、6Ω100Wの最大出力時、アンプの出力部には √(100W×6Ω)≒24.5V 24.5Vの電圧がかかっています。この同じボリューム位置でスピーカーを4Ωの物に交換すると、 出力電流:I=V/R から、アンプの出力には、 24.5V÷4Ω≒6.1A 6.1Aの電流が流れようとします。この値は先程の最大出力電流4.1Aよりもかなり大きいので、アンプは過大電流から回路を守るために保護回路を働かせるかもしれません。しかし、この時の出力は、電力計算式より W=V×I=24.5V×6.1A≒149W 149Wもの高出力となり、相当の大音響となっているはずです。アンプの電源回路の設計に十分な余裕が無い場合には、ここまでの大音量になる前に音が歪んだり割れたりしますので、ユーザーは事前に自覚できるでしょう。